里山エッセイ・鎌倉峯山の四季

峯山の四季折々の状況と活動内容をお知らせします。

2019年12月

1912ベニバラボロギク
   (冬場に綿毛を付けたベニバナボロギク)
もはや通常と見做されているのか、今年の秋、冬の高温多雨はあまり話題になっていませんが、かなりの異常気象です。
峯山で実感した最初は菜の花の発芽状況です。例年通りの発芽で最初は順調なので安心していたらアッという間にほぼ全滅しました。原因は、時ならぬ頃に大発生した虫による食害です。
その後二度も種まきしましたが、生えては食害の繰り返しで、今は所どころ何とか育っている状態です。菜の花は冬場に成長するので一縷の望みを持って眺めていますが、昨年のような見事な菜の花は無理そうです。
ベニバナボロギクにも異常が起きています。この時期は出てこない筈なのに、今また鎌首を持ち上げて花を咲かせ、あろうことか、綿毛までつけている始末です。見つけ次第に退治していたら、メンバーの一人のうせいさんが、「うまい雑草、ヤバイ野草」という本を見せてくれました。何とこの本の中にベニバナボロギクが、東南アジアでは食用として好んで食べられているとあります。うまいと分かれば大勢のひとが始末してくれるので労せず駆除できると言いますが、ホントでしょうか。
今年の初夏に、ベニバナボロギクの綿毛が地吹雪のように飛散しているさまを見た私にはとても信じられません。先日、断固駆除しようと見える範囲の花を刈り取りました。本によれば丁度食べごろらしいですが、とても食べる気にはなりません。
令和に入って未曾有の災害が何度も発生しました。中世だったら即改元ものです。もっとも数十年に一度クラスの災害が毎年続いていますから、その都度改元する羽目になりそうです。
でも、元号なんて世界的には通用しませんから別に支障はないでしょう。せっせとゲンの良い元号に変えたらいいのです。

1912クヌギ黄葉
(写真① クヌギの黄葉)
1912コナラ
(写真② コナラの巨木)

1912アカシデ
(写真③ アカシデ)

写真①はクヌギの黄葉で、写真②はコナラの大木です。
クヌギもコナラもかって里山の主役でした。これらは、薪炭用には数年に一度根元から切って更新するので、背丈は高くなく株立ちしているのが普通の樹形でした。
ところが化石燃料が普及すると放置状態となり、里山のコナラ、クヌギは大木化します。

以前、樹名板を設置するために峯山の散策路を樹木医さんと一緒に歩きましたが、名前を言われるまでそれがクヌギ、コナラと気付かぬほど巨木化していました。それは桑の木についても言えます。巨木には樹名板が取り付けてありますので、散策のおり確かめてみて下さい。イメージが変わります。

ところで、クヌギ、コナラの類はハハソとも言います。万葉集にも出てくる古語です。今、峯山の会では、このハハソを雑木林に増やそうと実生苗を移植しています。
数年後には樹液にクワガタやカブトムシが集まり、子供たちを喜ばせることでしょう。秋には黄葉が散策する人を楽しませ、その実を求めてタヌキが出てくるかもしれません。時にはイノシシも。

先日、通称テラスから下を眺めていたら、紅葉した木が何本か目に入りました。近づいてみるとアカシデの幼木がきれいに色づいていました(写真③)。隣りの黄葉はアカメガシワです。他にもカエデの実生木が紅葉していました。今年もようやく気温が下がってきたので一気に色づいたのでしょう。
この分でいくと何年も経たないうちに、峯山の雑木林は恰好の秋の散策場所になりそうです。

1911アキノ1
(写真①)アキノタムラソウ

最近、関係者で話題になった草花があります。それはアキノタムラソウという日本原産の多年草です。(写真①、のうせいさん提供)
わたしの愛読書の一つに足田輝一著「雑木林の博物誌」があります。氏は、武蔵野の雑木林をこよなく愛し、この一書を刊行しました。その中に新秋の七草としてアキノタムラソウを推している箇所があります。峯山も武蔵野台地の一部ともいえるので、どこかに咲いていないかと思っていましたが、今秋の台風被害で倒れた山桜を処理していた折り、それらしい花を見つけました。写真を撮って山野草に詳しい人に見せたら、多分ヤマハッカだと言われてガッカリしました。
ところが、メンバーの一人、のうせいさんが、以前からこの花に興味をもっていて鎌倉山の三島神社に咲いていたものを撮影していました。のうせいさんに現場確認をしてもらうと、葉の付き方からいってアキノタムラソウに違いないと同定してくれました。
ヤマハッカが咲いているという峯山入口にあたる八雲神社の土手に行ってみると、どちらがどちらとも言えないくらい似ている草姿でした。どちらもシソ科の多年草ですが、不思議なことにアキノタムラソウの名前の由来は分かっていないそうです。一説には、ムラサキソウが多く咲いているのでタムラサキソウ、これがなまってタムラソウ、さらに春咲くものと区別するためにアキノタムラソウとなったといいます。
草姿が乱れるので鑑賞用には向かないとされ、そのため名前もいい加減にされたのかも知れません。
「手にとらで やはり野に置け れんげ草」と同じく野で見るのにふさわしい花と云えそうです。
いずれにしろ、今まで目にしたことの無かったこのような花が咲くのは、薮を払って日当たりがよくなったせいです。
中には、ノボロキクやアザミなど余り増えてもらいたくない花も出てきますが、可憐な花や貴重な花が今後増えていきそうな気配があります。

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