210620やぐら
今は無くなってしまいましたが、以前は聖ミカエル幼稚園の脇に横穴があり、水が湧き出ていました。これは、鎌倉時代から知られていた常盤の硯水という名水です。子供風土記には、明治のころには、ここを通る旅人のために茶屋があって人々が喉を潤したそうです。私も地元の古老から、終戦後もこの水を馬で市内に運んでいたと聞いたことがあります。同じような湧水が八雲神社の周りにも何カ所かありました。鎌倉時代には、庶民の殆どが前浜といわれていた由比ヶ浜近くに住んでいましたから、井戸を掘っても塩水しか出てこないので、飲み水はこのようにしか手に入らなかったはずです。名水と呼ばれた事情はこのあたりにもあったことでしょう。
この名水を、つい最近になって私自身味わうことができました。NPO法人やまもりのイベントでの出来事です。親子合せて数十人の方々と一緒に飲んでみました。八雲神社裏手にある二層構造の珍しい「やぐら」見物をした後、近くの沢を流れる水を子供たちと一緒に汲み、峯山に上ってから飲める化処理をしました。ろ紙で濾したあと煮沸消毒しただけの簡単な処理ですが、水処理の専門家である、のうせいさんにお願いしたので安心です。言うまでもなく安心感は味の大事な要素です。
実際に飲んでみると、水道水には無いうまみすら感じられました。そのあと、峯山茶を皆さんに振る舞いましたが、こちらも大層喜んでもらえました。親ごさんの話しですが、普段お茶を飲まない子がもっとくれと催促したと驚いていました。山で大暴れした後でのどが乾いていただけかもしれませんが、それを差し引いても常盤の名水の美味しさは立証されたといっていいでしょう。
古来、梶原周辺には温泉場もあったくらいですから、豊かな地下水脈が流れているのでしょう。大規模な宅地造成がなされた現在でもこのような名水を味わうことが出来るのですから、昔はもっとミネラル分豊かな美味しい水が流れていたに違いありません。このようなイベントを通じて、自然の恵を実感し、さらには自然の大切さと後世に伝える意義を感じてもらえれば言うことなしです。やまもり関係者に感謝です。