里山エッセイ・鎌倉峯山の四季

峯山の四季折々の状況と活動内容をお知らせします。

タグ:イヌビワ

210823ミズヒキソウ
真夏の暑い盛りでも、ふと秋を感じることがあります。それは、草花の移ろいであったり、空の色や風の吹き具合などに突然のように現れます。
お盆休みと称して10日程山に入らなかったので、代わりに久しぶりに早朝散歩をしてみました。以前はこれが日課でしたが山仕事をするようになり中断していました。夜明け前から歩きはじめますが、普段気付かないことに出合い新鮮な気分になります。何よりも静寂さが気に入っていますし、あちこちに秋の気配を感じ取ることができました。
ラジオ体操のグループにも出会いました。以前は大勢の人たちがラジオを鳴らし、声高に喋るので苦手でしたが、リタイヤした人が一気に増えたのでしょう、今は2,3人でひっそりとやっていました。これは秋の気配というより、何だか人生の秋を感じるようで侘しい気がしました。
山での気配は、何んといっても草花の変化です。ヤブランが薄紫の花を立て、ヤブミョウガの実が暗紫色に色づき、そしてミズヒキソウが路傍に目立つようになると秋近しです。そして、今年の秋はどんな事になるか気になる時期です。
フジバカマは順調に繁茂していますが、ミソハギはうまく花が咲いてくれません。栗の実はどうか、イヌビワはジャムが作れるほどになってくれるか? 市の調査によるとタヌキが増えているようですから、イヌビワの実の争奪戦になるかもしれません。9月に入るとNPO法人やまもり主宰の子供のためのイベントが予定されています。今度のテーマは「秋の峯山を味わおう」だそうです。ますます心配になります。

210422イヌビワ
(上を詰めたらうまい具合に下枝が出てきた)
峯山付近には、ニワトコ、アカメガシワ同様にイヌビワが沢山自生しています。藪を切り拓いている頃は邪魔だとばかり、せっせと伐採していました。それが、ある時期から逆に保護対象となり、その上幼木を移植するようになりました。
それは、上皇陛下が退位表明されてまもなく、上皇后へのインタビュー記事に「陛下の大好きなイヌビワの木を植えて差し上げたい」とあったのがきっかけです。興味をもって調べてみると、イヌビワはかなり特異な性質を持つ木であることが分かり、伐採方針を止めました。
名前にビワとありますが、その実の味はイチジクに似ています。その実を食べてみると、思わずペッと吐き出しました。ネット上には、たいてい「食べられなくはないが旨くない」と出ています。また、タヌキが好んで食べるとも出ています。
しかし、これは過った情報であることが後で分かりました。黒く熟した実はかなり甘く、舌の上にブツブツ感が残りますが不味くはありません。試みにジャムにして皆に食べてもらったところ好評でした。詳しく調べるとイヌビワはオス・メス異株で、美味しいのはメス株の実です。オス株のものは、タヌキも吐き出しそうな代物です。私が最初に食べたのもオス株のものだったのでしょう。
イヌビワの若芽も旨いというので、先日、お浸しと天ぷらで食べましたが、味が濃くてかなりいけます。イヌビワは秋になると黄葉します。カエデなどよりも存在感のある発色で、秋の雑木林を彩ってくれます。今やイヌビワの評価は急上昇中です。最近峯山にタヌキが出ますが、タヌキに食べられ前に人間が片付けてしまいそうな勢いです。竹林を皆伐した跡地にイヌビワが何本もあり、ここにクワとイヌビワの幼木を沢山移植しています。子供たちが採取しやすいように剪定しているので数年後には果樹園として機能することでしょう。

1912イヌビワ
(イヌビワ)

写真は富士見台に生えているイヌビワの木です。イヌビワは峯山の至る所に生えています。今まで雑木林や広場の草刈りでは無造作に刈り取っていました。しかし、この写真のイヌビワは特別です。何しろ樹齢180年の山桜の枝を切除して救済された木なのです。
といっても、それほど大袈裟な話しではなく、山桜の枝が折れてイヌビワにもたれ掛かっているのでイヌビワが可哀そうだと、市に通報があったそうです。そこで市は、山桜の枝(写真の手前の枝)をバッサリと切ったのです。
この枝はずい分前から折れていて、うまい具合に垂れ下がって花が咲くので隠れた撮影スポットになっており、毎年趣向を凝らした撮影会が開かれていました。
山桜の保護活動をしている我々としては、救済相手が違うだろうと異をとなえましたが、いろいろな意見がありますからと軽くいなされました。
ところで、2019年1月の新聞記事にこんな事が載っていました。天皇退位を前にして美智子さまが退位後の事を尋ねられた際、上皇の好きなイヌビワでも植えて云々と言われたそうです。
以来イヌビワへの対応が変わってきました。今まで邪険に扱ってきたのに、雑木林の実生木を育てるようにしたのです。秋の黄葉も目当ての一つです。しかし、今年は色づく前に葉が落ちてしまい期待外れでした。
誰かのひと言でコロッと態度を変えてしまうのは如何なものかと思いますが、物事は見る方向によって全く異なる面を表すことがあります。それはむしろ当然なことかもしれません。
竹林の中の厄介者アオキも、せっせと駆除していますが、英国などでは日陰でも育つ上、朱い実をつけるので好まれているそうです。
いつの日か峯山の会でも、どこかにアオキ林を作ろう!なんて言い出す人が出てくるかも知れません。

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