里山エッセイ・鎌倉峯山の四季

峯山の四季折々の状況と活動内容をお知らせします。

2021年04月

210422イヌビワ
(上を詰めたらうまい具合に下枝が出てきた)
峯山付近には、ニワトコ、アカメガシワ同様にイヌビワが沢山自生しています。藪を切り拓いている頃は邪魔だとばかり、せっせと伐採していました。それが、ある時期から逆に保護対象となり、その上幼木を移植するようになりました。
それは、上皇陛下が退位表明されてまもなく、上皇后へのインタビュー記事に「陛下の大好きなイヌビワの木を植えて差し上げたい」とあったのがきっかけです。興味をもって調べてみると、イヌビワはかなり特異な性質を持つ木であることが分かり、伐採方針を止めました。
名前にビワとありますが、その実の味はイチジクに似ています。その実を食べてみると、思わずペッと吐き出しました。ネット上には、たいてい「食べられなくはないが旨くない」と出ています。また、タヌキが好んで食べるとも出ています。
しかし、これは過った情報であることが後で分かりました。黒く熟した実はかなり甘く、舌の上にブツブツ感が残りますが不味くはありません。試みにジャムにして皆に食べてもらったところ好評でした。詳しく調べるとイヌビワはオス・メス異株で、美味しいのはメス株の実です。オス株のものは、タヌキも吐き出しそうな代物です。私が最初に食べたのもオス株のものだったのでしょう。
イヌビワの若芽も旨いというので、先日、お浸しと天ぷらで食べましたが、味が濃くてかなりいけます。イヌビワは秋になると黄葉します。カエデなどよりも存在感のある発色で、秋の雑木林を彩ってくれます。今やイヌビワの評価は急上昇中です。最近峯山にタヌキが出ますが、タヌキに食べられ前に人間が片付けてしまいそうな勢いです。竹林を皆伐した跡地にイヌビワが何本もあり、ここにクワとイヌビワの幼木を沢山移植しています。子供たちが採取しやすいように剪定しているので数年後には果樹園として機能することでしょう。

210410エゴノキ
(雑木林に移植した4年目のエゴノキ 、今年は花が咲きそう)

雑木林を「ざつぼくりん」と読むと林業用語となり、有用でない林、つまり桧や杉ではない林の意味となります。
「ぞうきばやし」と読むと里山のイメージに近くなります。里山とは、地域住民が生活に必要な資源を得るために手入れを怠らなかった人工林のことですから、ほぼ同義語といえます。
しかし、石油による燃料革命で里山の価値は一気に低下して、その結果山の手入れをする人がいなくなり荒れ果てました。峯山も例外ではありません。燃料用に植えられたクヌギ、コナラは巨木化し、アズマネザサ(篠竹)や竹の侵食で人の入れない暗い山となっていました。
手の入らない里山はあり得ませんが、どこまで、どのように手を入れるかは関わる人によってまちまちです。里山の定義をきちんとしておかないと百人百様の状況になります。
峯山近辺は殆ど市有地、県有地です。ということは市民のもの、県民のものということです。我々が里山にどの様な価値を求めるのかによって手入れの方法が変わってきます。
子育て、子供の遊び場として利用したい人、手軽に山歩きをしたい人、山桜を愛する人、山野草に興味をもつ人、樹木や鳥、生き物に触れたい人、様々な要望があるはずです。
里山の価値がどこにあるか考えるとまとまりがつきません。しかし、雑木林として捉えれば整理がつき易くなります。きれいな花の咲く木、実のなる木、紅葉や黄葉を楽しむ木など様々な木々の間をゆっくり散策出来ればまさしく癒しの空間となります。暑い時には木陰を拾い歩いてフィトンチッドを満喫し、冬場には落葉した木々の間から海や山を眺めて開放感を味わう。そして運が良ければ山の幸も得られる。そんな雑木林が身近にあれば、ここに住んでいてよかったと実感することでしょう。こうして里山の価値が高まればボランティア活動も盛んになり、手入れが行き届きます。つまり、大勢の人が山に入り、山を利用することで好循環が生まれ、めでたし、めでたしとなる訳です。

↑このページのトップヘ