里山エッセイ・鎌倉峯山の四季

峯山の四季折々の状況と活動内容をお知らせします。

2020年07月

200726蚊遣り


もうふた昔も前の話しですが、加賀白山に上る前日に泊まった温泉宿でのことです。
若いオーナー夫妻と、その幼児ふたりと一緒に屋外で食事をとりました。食事中に、子供の顔にとまった蚊を見つけた母親が、あろうことか虫よけスプレーを顔に吹き付けたのです。無農薬の自然農栽培をしていた私には想像できない光景でした。聞けば、いつもそうやっていると涼しい顔して答えてくれました。
以来、安心して?私も農作業時に虫よけスプレーを使うようになりました。確かに快適に作業ができます。ただ、ケチな性分の私はスプレーを吹き付けて使うのはムダが多いような気がして一計を案じました。先ず左手の掌に吹き付けます。その手で顔の左半分を撫でまわし、次にもう一度吹き付けて今度は右手の手首と指周りを撫でまわします。ついで右手の掌で同じことをやります。つまりスプレーを4回吹き付けるだけで蚊よけ対策が終了します。これで8時間は蚊の心配なしに作業に専念できます。
ただ昼飯のときに蚊がプンプン飛び回るのは不愉快なので、やぶ蚊xxxというやつを周りに吹き付けておきます。これで蚊遣り対策は完璧です。
峯山の整備を始めた4年前には蚊は殆どいませんでした。それが今では普通に飛び回っています。生物多様性がもたらす負の効果です。蚊は主に花の蜜や樹液を吸って生きているそうです。ただ、メスは産卵のための栄養源として吸血するそうです。つまり、血を吸わせてくれる生き物がいないところでは子孫を残せません。吸血対象としては人間が一番のお得意さんでしょう。そのトンマな人間が完全武装してきたのでは、蚊一族としては子孫を残せるかどうかの大問題です。これは生物多様性と作業効率の二者択一という大命題に発展することを意味します。話しがモスキート級からヘビー級に飛んでしまいました。

200713雑木林
(雑木林のこかげ道)
200713移植木
(竹林沿いの移植木)
峯山の会では、約2万㎡を越える区域の緑地整備を行っています。
竹は、どこにでも侵食し、放っておくと全山竹薮化します。そしてこの中にある山桜の巨木が立ち枯れしてしまいます。そのため、山桜の保護と竹の侵食を食い止めるために、立ち木周りは竹の皆伐を行い、その他の場所は大幅に竹を間引いてこれ以上の竹藪化を阻止しようとしています。
しかし、この作業はかなりの難工事です。山中なのでとても足場が悪いのです。そこで、まず作業路を確保しないといけません。場所によってはロープを垂らして上り降りする箇所もあります。そんな苦労をして作った道なので、もう少し手を加えて散策路に活用出来ないかと考えました。
計画では、峯山の山頂から雑木林を経て杉木立の中を歩き、それからしばらく竹林沿いに歩いたあと、八雲神社ルートにある大タブの木のところに出ます。次に西に向かって樹木の下を通り梶原口近くに出ます。そこから峯山に戻る回遊路です。
それでどうなるかと云えば、いろいろな林相の中を歩くので変化に富んだ散策を楽しめる上に、山の中の様子をよく知ることが出来ます。小1時間ほど歩くことになるので、トレッキング効果も期待できます。疲れたら見晴らしのよいところのベンチに腰かけ、ぼんやり海や富士山を眺めていれば恰好のストレス解消になります。
名付けて「こかげ道」です。とはいえ、竹を皆伐したところは立ち木がないのでむしろ「ひなた道」です。そこで、せっせと実生の苗木を移植しています。10年もしたら立派な木陰を作ってくれることでしょう。
今、山に遊びに来ている子供たちが大きくなってこの道を歩いたとき、むかし、峯山の会のおっさん達が何かやっていたなあ、と思い出してくれれば、関係者は草葉の陰で大喜びすることでしょう。

↑このページのトップヘ